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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)12263号 判決

理由

一  訴外加藤秀富が訴外谷尾喜朔に対し、原告主張の経過で強制競売を申立て、競売開始決定を受けた事実は、原告と被告会社との間で争いがなく、原告と被告星野との間においては《証拠》によりこれを認めることができる。そして、右の競売事件において被告両名が原告主張のとおり代金三、二五〇、〇〇〇円で競買申出をし保証金三二五、〇〇〇円を納めたので、競落許可決定がなされたが、被告両名が競落代金の払込をしなかつた事実は原告と被告両名との間で争いがない。

次に、右の結果行われた再競売によつて訴外名児耶清が代金六九六、八〇〇円で競落許可決定を受け、代金の払込をしたので、配当が行われ、債権者である加藤秀富が債権全額の弁済を受けた事実は、原告と被告会社との間で争いがなく、原告と被告星野との間においては《証拠》によつてこれを認めることができる。また、被告会社との関係では公文書として真正に成立したものと認めうる右《証拠》によれば、右の再競売手続においては競売公告掲示手数料期日通知送達料として合計金六、九四〇円、競売手数料として合計金九、九六〇円等の費用が支出された事実を認めることができる。

二、以上の各認定を妨げるに足りる証拠はない。

以上の事実によれば、最初の競落人である被告らは、債務者である谷尾に対し、最初の競落価額と再競落価額との差額である金二、五五三、二〇〇円および再競売費用の内原告の主張する金一六、九〇〇円につき支払義務を負担するものというべきであるがこの支払義務は競落代金の支払を確実にするため、特別に定められた損害賠償義務であると解せられるから、競落人が数人の場合には各自連帯して右の債務を負担するものと解するのが相当である。なお、谷尾が被告らに対する右の債権を放棄した旨の被告星野の主張事実についてはこれを認めるに足りる確かな証拠はない。

そして、《証拠》によれば、谷尾が昭和四四年一〇月一八日に、被告らに対する右の債権を原告に譲渡した事実が認められ、右の譲渡通知が原告主張の日に被告らに到達した事実は全当事者間に争いがない。

三  そうすると、被告ら各自に対し、右の債権金二、五七〇、一〇〇円の内金二、〇三六、二二〇円とこれに対する本件訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和四四年一一月一六日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の本訴各請求は正当として認容しなければならない。

(裁判官 秦不二雄)

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